逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「自分で? 手綱を取るというのか」
「はい」

「しかしここらは急傾斜の坂だぞ、しかも岩だらけで足場が悪いと来ている」

 ソフィーは笑い、目の前の馬に近づいて、
「借りていいかしら、屋敷に行って帰ってくるまでの間ね」
 問われた兵は反射的にうなずく。

 ソフィーはスカートを持ち上げて(あぶみ)に足をかけた。鮮やかな動きで鞍に乗る、次には先頭を切って走り出した。

「・・!」

「お嬢様は乗馬も凄腕なのですよ」
 とガイも騎乗して、
「なにしろ僕達が教えたんですからね」
 セルビィも走り出した。

「僕達が教えただと」
 はい、という声が遠ざかって行く。

「おい待て、俺も行く」
 あわてて後を追った。


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