逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 外では風が舞っていた。それが鎧戸から流れ込んでいる。

 ソフィーは顔を上げた。
 引き寄せられるように戸口へ行く。そこのカーテンを開けた。

「咲いていたのね」
 扉を開けると花の香りが流れ込んできた。
 ア―ロンも窓辺に寄る。

 庭一面に白い花が咲いていた。
「フィアーラの花です。しばらく留守にしていたけど、今年も咲いてくれたのね」
 嬉しそうに言う。

「父と母と三人で世話をしてきた花なんです」
 と言ってから、
「あ、そうだ、二階の私の部屋へ行ってみましょうか。あそこだと一番よく見えるのよ、見渡す限りのフィアーラの花が」
 いそいそと階段を上がって行く。
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