逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「そうだろうね」
 じっと見ている彼女のおくれ毛が揺れている。

「母が作り始めたのを父が手伝うようになってね、その次は私。三人共土まみれになって育てたのよ。交配してこの花が生まれたから世界でここだけの花だと思うわ」

「それがあのフィアーラという花なのか」
「父と母がつけた名前なの。そして私の名前でもあるのよ」

「君の、名前?」
「ええ、両親は子供を多く欲しかったらしいけど、私しか生まれなくて。それであだ名みたいにいっぱいの名前で呼ばれていたの。ソフィーの他にフィアーラと呼ばれたり、フィオーラと呼んだりその時によって違うのよ、おかしいでしょ」

 その『フィアーラ』がこの花の名前になったのだと言った。
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