逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「庭師もいたけど両親は自分でやろうと決めたのね。それで使用人達も特別の花畑のように思ってくれて、フィアーラの花を大切にしてくれたわ」

 クスリと笑ってから、
「もうこの屋敷には誰もいなくなってしまったけれど。執事も家令も侍女長も去ってしまって」

 そう言うと背伸びするように前方を見た。
「あの向こうに、母のお墓があるのよ」
「え?」

「フィアーラの花畑を見下ろせる丘の上に」
「・・・・」

「こんど、父が帰ってきたらね、その隣に連れて行ってあげましょう。そうしたら両親とも淋しくないわね」

 丘を見つめてつぶやくように言う。

 アーロンはソフィーを見た。
 凛とした表情のどこかに言いようのない哀れさを感じた。
 それでも彼女は、微笑んでいた。
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