逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 そっと肩に手を置いた、そして抱きしめた。

 家人がいなくなってもひっそり咲き続ける花、それはまるでソフィーだと思った。

 むせかえるようなフィアーラが鼻孔をつく。

 もう、たまらなかった。
 抱いた腕に力を込める。

 ソフィーは息をのんだ。
 戸惑いがあった、体のどこかが強張ってくる。
 それでも腕を押しのける気にはなれなかった。

 窓の外で、風が鳴っていた。
 その音に混じって、ふいにか細い声が聞こえた気がした。
 か細いけれど甲高い・・。

 昼間の、あの嬰児だろうか、それが耳に残っていたのだろうか。

 人間が生きるすべの、本能のような、そんな響きが・・。

 じっと目を閉じた、わずかな声が口からこぼれる。
 そこにアーロンの唇が落ちた。
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