逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 そのあとで遺品を整理していたとき、意外なものが見つかった。
 王の日記だった。

 毎日の苦悩を記したものだった。
 臣下との軋轢、自分が裁断を下すときの彼らの驚愕したような顔、そして次にくる侮蔑の表情。

 (まつりごと)をどうやったらいいのか皆目わからない。難しいパズルを目の前に突き出されたようなものだった。
 それを自分一人の裁断で決めろという。それが王の仕事なのだと。

 まるで夢を見ているようだった。政治的な状況を説明されてもまるで彼方のことのような、そう、夢の中にいるのようにフワフワとしていた。

 周囲の臣下はすべてを理解しているようだった。しかしそれが自分にはわからないのだ。まるで両目両耳をふさがれたように理解できない。

 ご裁断を、と迫られても汗が噴き出すだけだった。そのあとでいつも臣下が呆れたような、侮蔑の表情を浮かべるからだ。
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