逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 己の中で煩悶するものを吐き出せず、誰にも相談できず、おそらく自分が一番感じていただろう、愚王という肩書きの中でもがいていた。

 もしも低層の臣下であったなら、誰かに導かれその通りの範疇で生きていく人生なら、穏やかな日々を送れただろう。

 王の器ではなかった。しかしそれに生まれついてしまったがための葛藤。

 棺に入った王は、それまでの笑んだ表情とは打って変わって苦悶の影を忍ばせていた。


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