逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 指名されたヴェンが驚いて自分を指さした。

「こいつは見かけは生っちょろいが腕は立つ。道中で役に立つかもしれんからな」

 ソフィーはじっと考えていたが、
「それでは、そのように」
 深々と礼をして出口に向かった。

 アーロンが素早くヴェンに外套を渡した。
 受け取った彼がはっとする。その陰に小さな鳥籠があった。

 ソフィーは玄関で立ち止まった。
 食卓に戻ってアーロンに近づくと、

「あのぉ、恐れ入りますが」
「なんだ」
「その、少々お借りできないでしょうか」
「何をだ」
「お金です、手持ちの物がないもので」
「金だと?」

 絶句してソフィーを見た。


          * * * * *

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