逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 一国の(あるじ)がいなくなって王宮が揺らいでいた。

 今までのグリンドラ派に対して敵対する派閥が現れたのだ。

 まさか新興勢力が大勢を掌握することはないだろう。
 だが防波堤が削ぎ落されるように何かが崩れていく。

 どの勢力がどう動くのか、自分はどの派閥につけばいいのか。
 大半がその心理に陥っていた。

 宰相のシュテルツは(ほぞ)を噛む思いだった。

 今はこんな権力争いをしているときか。
 バッハスの脅威が間近に迫っているのだ、一丸となって立ち向かうべきなのだ。

 彼は声を枯らして叱咤した。
 しかし権力に目がくらんだ者には届かなかった。


 そして、重大な局面はそのあとすぐにやって来た。
< 190 / 477 >

この作品をシェア

pagetop