逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
謎めいた娘
 辺りはもう真っ暗だった。

 ヴェンはソフィーに続いて歩いて行く。
 この道はラクレス領に続く道だ。

 ラクレスは広大だがほとんどが山岳地帯で、領主が住んでいるのは王都に近い所だ。
 だから徒歩でも帰れないことはない。
 しかしさっき彼女は『山へ帰る』と言っていた。
 だとすればどこへ行くのだろう。

 道には商店が並んでいる。それはすべて戸を閉めていた。

 ソフィーは各店を確かめると薬屋の前で立ち止まった。
 扉をドンドンと叩く。ヴェンが何事かと目を丸めた。

「開けて下さい、欲しい物があるのです」
 力任せに叩き続ける。

「止めてくれ、戸が壊れるじゃないか」
 店主がうさんくさそうに顔を出した。
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