逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ソフィーがそれを見ていた。
 ふと何かに気付いた。
「ラクレスの・・、かたがた?」

 アーロンは敬語を使ったのだ。
 それは負傷兵だけへの言葉だろうか。

 彼は軍の最高位の身分だ、負傷兵とは比べるべくもない。だが今は敬語を使っていた。

 何かの意味があるように思えた。

 言外に、ダン・ラクレスに向けて言ったのではないか。ラクレスの領主であるソフィーの父、そこに想いを込めたのではないのか。

『お父上の無念は、必ず晴らしてみせる!』
 と。

 アーロンはじっとソフィーを見ていた。
 そしてうなずいた。

 熱いものがこみ上げてくる。
 顔を上げてはいられなかった。
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