逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 アーロンがソフィーに向き直る。
「しかしすさまじいな、敵の真っただ中に身を躍らせるとは」
「え?」

「さっきは囮になろうとしていただろう」
「見ていたんですか」
「ここに着いた途端にあの光景が飛び込んで来た。あやうく息が止まるかと思ったぞ」

「どうしていいかわからなくて、洞窟の負傷兵の元に行かせる訳にはいかないし、無我夢中で」
「いい度胸だ、君らしいな」
 だがその目は決してほめていない。ソフィーもそれは分かっていた。

「もうこんな危険なことはやめてくれ、金輪際だ。もし切り付けられたらどうするのだ」
「ごめんなさい。でも洞窟の兵は四十人余りで、私の命はたった一つですもの」
 当然でしょう? と訴えてくる。

「ったく!」
 ため息が出た。
< 221 / 477 >

この作品をシェア

pagetop