逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
怒涛の濁流
 夜の王宮に篝火が灯っている。
 
「なにっ、またしてもいなくなったのか」
 シュテルツが大声を上げた。

「少し前まではいらっしゃったのですが」
  突然姿が見えなくなったのだと。

「今夜敵が来ると言ったのはアーロンだぞ、夜が明けたら王宮に突撃してくるはずだと。それなのに」

 きのうは半日姿が消えていた。

 帰還した彼を問い詰めると、
「まあそういきり立つな。こっちはこっちで大事な用に出向いていたんだ」
 とぼけた返事をしたものだ。

 その舌の根も乾かないうちに。

「とにかくアーロンを探せ、一刻を争うのだ」
 腹立ちまぎれに怒鳴った。

 
          * * * * *

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