逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 東の空が明らんでいる。
 夜明けが近かった。

 アーロンは最上階のバルコニーに立っていた。

 そこから各所に配備された隊が見える。
 大門や城壁を守る大勢の兵、狭間(さま)側防塔(そくぼうとう)に潜んでいる者、物見の塔の見張り兵もいる。

 彼らは一様に西の方角を睨んでいた。
 向こうにラクレス領があり、バッハスがそこから攻めてくるからだ。

 途方もない戦いになるだろう。
 おびただしい死傷者が懸念される。
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