逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「集中しろっ、いっときの辛抱だ!」
 しかし怒号にかき消されて彼らに届かない。

 戦いはまさに熾烈を極めていた。

 その時だった。
 物見の塔の兵が大声を上げた。

「うわーっ! 水だぁっ、みずがくるぞぉっ! 濁流が押し寄せて来るぞぉっ!」
 悲鳴のように絶叫している。

 だが剣を交える兵には見えない。

 地上のバッハス兵はなお二階に登ろうとしていた。
 彼らは背後に気付かない。
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