逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 逃げ遅れたグリントール兵がいた。
 二階のバルコニーから敵を見ていた者だった。

 濁流は手すりを越えて彼らを掬い取る。
 二人は何かにつかまろうとした。

 だが次の大波が襲いかかる。
 彼らは簡単にさらわれて流されていく。

「しっかりしろっ」
 アーロンが怒鳴った。
「前方に大木がある、それにしがみつくんだ!」
 
 王宮の大門を囲んで楠木が植えられていた。
 それが流される二人の前に迫っている。
 しがみつけれるか、それとも強打されるのか。

 皆が固唾を呑んで見つめている。
 その目前で二人は濁流に吸い込まれていった。
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