逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 ・・・・
 ・・・・

 誰もが声を消す。
 落胆してがっくり膝を落とした。

 と、隅から声が上がった。
「おい、あそこだ」
 大きく茂った梢の先に、かろうじて引っかかっている影が見えた。

 まるで宙吊りのようだった。片方は逆さまに、片方は襟首をつかまれたようにして。
「おういっ、だいじょうぶか?」
 そんな声に、二人は小さく手を振って返した。

 あたりに安堵の声が漏れた。歓声が上がった。

 それを機のように、水の流れが変わりはじめた。

 怒涛のようだった大波が明らかに力を失っている。

 水の勢いがようやく尽きようとしていた。
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