逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「王子は王妃様と何度もマリンドウに遊びに行っていらっしゃいましたからね」
 彼の守り役が説明する。

 王妃はマリンドウ国への里帰りにいつも王子を伴っていたのだ。

 グリンドラ王の子はこの王子だけ、他に後継者はいない。そんな状況で頻繁に国外に連れ出すのはいかがなものか、苦言を呈する臣下も多かった。
 王の血筋が途絶えてしまう懸念だった。

 しかしグリンドラ王は二人の出国をいとも簡単に許してしまう。結果、王子はこれほど隣国の王に懐いているのだ。

 そして、抱かれた王子がひょんなことを言った。それはグリント―ル国の臣下が卒倒する言葉だった。
「・・ちちうえ」
 と。

 聞き間違いかと思った。まだ幼い王子が、おじうえと言い間違えたのかと。
 しかし母のグリンドラ妃は平然としている。

 マリンドウの王は、
「元気だったか?」
 優しく微笑んで頬ずりまでしていた。

 アーロンらは唖然とする。
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