逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 その通り、王には外戚さえもいなかった。
「だから王様は憂慮なさったのです。自分に跡継ぎがなかったら、その後の国の荒廃は目に見えていると」

「それで?」
「それで、王は一計を案じられました。周囲に内緒で私に子が出来たように細工することを。懐妊したように腹に布を撒けと。そして産み月になったら」
「・・なったら?」

「隣国の私の兄王から一子をもらい受けるように、と」
 一同が目を剥いた。

「し、しかし王妃様、そうだとしたら、そのお子は」
「はい、陛下のお子ではありません」
 同じことを繰り返した。
「でも、それでも国を乱すよりはいいだろうと」

 あのとき、グリンドラ王は破顔した後で、
『名案だろう?』 
 意気揚々と言ったものだ。
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