逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 この国の臣下の子をもらい受ける手もある。しかしいずれその出自が判明するだろう。いくら口止めをしても、それほどの重大事はどこからか漏れてしまうものだ。
 そしてそれは後々の派閥が懸念される事態だ。

 それならいっそ隣国の、王妃の血筋からもらい受けようではないか。そしてその子を我らの子として育てるのだ。
 亡き王は、王妃にそういって(さと)したのだという。

 周囲の臣下はただ絶句している。

 かろうじてアーロンが、
「しかし、その、そうだとすれば、失礼ながら王子様にはこの国の王族の血は流れていないことになりますね」

「はい、まったく一滴も」
 再びあっけらかんと言う。

 毒気を抜かれて一同が黙り込む。
< 258 / 477 >

この作品をシェア

pagetop