逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 アーロンが気を取りなおして、
「しかし、いま王子様は、マリンドウの王に父上とおっしゃいましたよね。だとしたら王子様もご存じだったのですか」

 わずか五歳の子だ。おぼろにでも自分の出自を知りながらマリンドウ王に接して来たというのか。そしてあれほど溺愛されていたグリンドラ王との接触は?

 王妃は笑って、
「まさか! この子にはさっき話したばかりなのです、これから会うお隣の国王陛下があなたの本当のお父様なのだと。そしてお母様はその妃であられる王妃様なのだと」

 マリンドウへの里帰りのたびに王子を伴い、そこの王夫妻と対面させていた。
 マリンドウ王はもちろん実子が帰って来たのを知っている。目に入れても痛くないほど可愛がり、結果、王子は王に懐いていたのだ。

「だから事実を話しても王子は嬉しそうでしたよ、マリンドウ王があなたの本当のお父さまですよ、といったらにっこり笑って」

 アーロンらは絶句した。
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