逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 マリンドウ王は笑みを浮かべてアーロンらを見た。
「王子を守ってくれて感謝する。これからすぐこの子と妹を伴って帰国するつもりでいる。よろしく頼む」

 それから『王一族』が出発するのに時間はかからなかった。
 待機させていたマリンドウ王家の紋が入った馬車に乗り込むと、大勢の護衛が周囲を囲んだ。
 窓から王子が顔を出した。無邪気に笑ってアーロンらに手を振った。

 出発の号令がかかる。
 たちまち一団は遠ざかり、後には彼らの馬が残した砂ぼこりが舞っていた。

 ・・・・
 ・・・・

 誰もが目を剥いていた。
「なんだということだっ、けしからん!」

 来訪者の一団は、影も形も無くなっていた。


          * * * * *
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