逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「まあ地道にやっていくしかないだろう」
 達観したようにアーロンが言う。
「この王宮自体がどうなるかわからないのだ。もう王妃も王子も帰っては来ないだろう、王子の出自を臣下の前であれほど明確に言ったのだからな」

「しかしだからと言って、これから何を拠り所にしていけばいいのだ。行政は? 軍は? いったい誰を頂点に行動していくというのだ」
 
 今までの概念が瓦解してしまった。それが彼を混乱させていた。
 いや彼だけではない、この国の誰もが同じだろう。

「そう思うのも無理はない。だかとにかく戦後処理だ。政務のトップとして、まず大通りにある家の被害の賠償に当たってくれ」
「・・それは分かっている。それで軍は何をするのだ」
「戦傷者の把握だ。傷ついた兵を治療する必要があるからな」
 
 負傷者は多数出ていた。しかし死者はないと報告を受けている。あれほどの戦禍で奇跡のようだった。
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