逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 彼はアーロンの盟友だと聞いている。
 今は事情で二人の歳は違っているが昔からの知己だったとも。

 ソフィーは貴族としての丁寧なあいさつをした。
 ラクレス令嬢だが身分は宰相であるシュテルツが上だからだ。

 だがその彼が臣下のようにへりくだっていた。
「ソフィー・ラクレス様でございますね」

 え? と目で問いかける。

「そう改まるな、彼女が戸惑っているではないか」
 ア―ロンが取りなせば、
「そうは言ってもです、これには深い訳があるのですよ」

 応接間のような広い部屋に通された。

 壁には幾つも肖像画があり、その前にテーブルがあった。
 シュテルツは二人を上座に案内し、自分は下の席にすわった。
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