逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 廊下の両側にはいくつもの扉があった。
 
 目につく壁も天井もさり気ない贅が尽くされている。
 ここはどなたのお屋敷だろう。

 ただ、屋敷中に人の気配はほとんど無かった。
 しばらく無人であったかような静寂さが漂っている。

 奥の突き当りに一人の影が見えた。
 五十がらみの白髪の紳士だった。

「ようこそおいで下さいました」
 ソフィーにゆっくり頭を下げた。
 
「この国の宰相であるシュテルツ殿だ」
 初対面になる彼女にアーロンが告げた。
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