逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「そうして体制を固めたいのだ。負傷兵の居場所を確保したら、今度は君の部屋だ。俺の屋敷に作ってある。今夜はそこへ案内するよ」
「私の、部屋ですか」

「俺の部屋の隣だ。便利な造りでね、寝室の奥に通路があっていつでも行き来できるのだ。どうだ、気が利いているだろう」

 どこまでしゃべるのか、シュテルツの表情が変わった。全身で聞き耳を立てている。

「一度だけだぞ、俺達が一緒にいた夜は。今度こそ片時も離したくないのだ。毎晩この腕に抱いてだな・・」
 
「アーロン様!」
 赤くなって抗議する。

「結構ですなぁ、この上は一刻も早くお世継ぎを設けて下さいませ。そしてハインツとレブロンご両家の繁栄をお願いしますぞ」

 そこまで言ってシュテルツは姿勢を改めた。

「その上で・・」
 とゆっくり踏み出してから、

「もう一つお願いがございます。時期が来ましたらあなたに帝王学を学んでいただきたいのです」
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