逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「帝王学だと? なんだそれは、俺には関係ないだろうが」

「この国の頂点を把握しておいていただきたいと。何しろこの国には王も、それに連なる王族も居なくなったのですから」
 落ち着いた声になっていた。

「まあアーロン殿には国軍の長としての覇気がある、すぐにも人の上に立っていける、それは間違いないのですがね」
 
 アーロンとシュテルツが見つめ合う。
 その視線がからみあった。

 先にそれを外したのはシュテルツだった。

 そしてソフィーに向き直ると、
「あなたには、この国の重要な位置に就いていただく事になると存じております」
 へりくだってはいる。だが暗に諭すようなものが滲んでいた。

「え?」

「その節は、何とぞよろしくお願い申し上げます」

 と言うと最大の礼を尽くして頭をさげた。

 ゆっくり上げた顔には、言い尽くせぬほど晴れやかなものが浮かんでいた。
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