逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
望む本能のままに
 玄関に馬車が横付けされていた。
 外出着の女性が乗り込もうとしている。

 その足が止まった。
 大門から来た騎馬の一団に気付いたからだ。

「まあ、アーロン様」
 駆け寄ったのは侍女長のリズだ。

「どうしたのだ、こんな時間にどこへ行くのだ」
 あたりはもう夜が迫っている。

「間に合ってようございました。実は業者から連絡があったのです。注文していた例の寝具が届くとのことで、今から受け取りに行ってまいります」
「ああ、ご苦労だな」

 リズはソフィーに目をやった。
 うやうやしく礼をしてから、
「ようこそおいで下さいました。ソフィー・ラクレス様でございますね」
 



< 274 / 466 >

この作品をシェア

pagetop