逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 そこまで言ってシュテルツは姿勢を改めた。

「その上で・・」
 とゆっくり踏み出してから、

「もう一つお願いがございます。時期が来ましたらあなたに帝王学も学んでいただきたいのです」

「帝王学だと? なんだそれは、俺には関係ないだろうが」
「念のためと申しますか。この国の頂点を把握しておいていただきたいと。何しろこの国には国王も、それに連なる王族も居なくなったんですから」
 しっとりと落ち着いた声になっていた。

「まあアーロン殿には国軍の長としての覇気がある、すぐにも人の上に立っていける方だ、それは間違いないのですがね」
 
 アーロンとシュテルツが見つめ合う。
 その視線がからみあった。
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