逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
望む本能のままに
 玄関先に馬車が横付けされていた。
 外出着をまとった女性が乗り込もうとしている。

 その足が止まった。
 大門から来た騎馬の一団に気付いたからだ。

「まあ、アーロン様」
 駆け寄ったのはこの屋敷の侍女長のリズだ。

「どうしたのだ、こんな時間にどこへ行くのだ」
 あたりはもう夜が迫っている。

「間に合ってようございました。実は業者から連絡があったのです。注文していた例の寝具や薬品が届くとのことで、今から受け取りに行ってまいります」
「ああ、ご苦労だな」

 リズはソフィーに目をやった。
 うやうやしく礼をしてから、
「ようこそおいで下さいました。ソフィー・ラクレス様でございますね」
 



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