逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 岩は裂け目が走って剣先のようだった。そんな形状が一面に広がっていた。

 入口があるはずだ、しかし見つからない。

 途方に暮れたとき顔に当たる風を感じた。
 裂け目から僅かに風が出ている。
 手を突っ込んでみる。すると亀裂の奥にかろうじて体が入る隙間があった。

 意を決してそこに入った。
 暗く狭い隙間を進んでいく。

 と、急に広い空間に出た。

 ロウソクが灯り、それに照らされて数人の影が見えた。

「それにしてもお嬢様が無事に帰られてよかったです」
「なんとかね」

 そう言ったのはソフィーだ。
 お嬢様と呼んだのはラクレス家の侍女だろう。
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