逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
再訪
 霧がかかっていた。
 これほど白一面になるなど滅多にない。

 そのなかを青年が歩いてきた。
 誰何する門番に紹介状を出した。
 シュテルツ直筆の書だ。彼が来たらすぐ自分に案内するようにとあった。

 廊下を歩く青年は懐かしそうに左右を見ている。

 治療室のベッドにシュテルツが横たわっていた。
 
 足早に近づくと、
「お久しぶりです、シュテルツ様」

「来てくれたのだな」
 笑みを浮かべて、
「よく来てくれた。オルグよ、君に頼みがあるのだ」


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