逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 宰相補佐が入ってくる。
 オルグを見ると静かに礼をした。

 オルグは故グリンドラ王の左遷にあって地方に流された経緯がある。
 互いの立場は微妙なものになっていた。

 シュテルツはベッドの上に半身を起こした。
 オルグらが慌てて止めようとする。

「大丈夫だ。寝ていては話が出来んからな」  

 そして、
「単刀直入に言おう。私は君ら二人に政務を担ってほしいのだ」

 予期した言葉だったのだろう、彼らは黙っている。

「そうやって政務を固めて、その上に立つ人物をも考えている。しかし煮詰まってはいない。彼にほのめかしても(てい)よく躱されるからね。だが今の混沌としたわが国が立ち直っていくには欠かせない存在なのだよ」

 声は小さかった。しかし凛としたものが宿っている。
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