逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 いつの間にか、深夜になっていた。
 ソフィーは重い足取りでベッドに向かう。

 自分に与えられたこの部屋、その奥にある寝室。
 扉には施錠の仕組みがあった。

 ハインツ邸の家人に何かを思うものはない。
 しかし一人で眠るときはどこか不安がよぎる、自然に鍵をかけるようになっていた。
 ベッドに入ってほっと息をつく。

 相変わらずアーロンは帰って来ない。
 シュテルツは意識が戻ったり混濁したりしているという。
 そんな盟友の病状と、彼の執務の代行、本来の軍部の責務、さらに戦後処理に忙殺されているのだと。
 
 どうぞ万事がうまくいきますように。
 祈る思いで眠りについた。
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