逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「もうっ!」
 とたんに血がのぼった。側にあった枕を取って、
「ふざけないでよ」

 必死な顔が目の前にある。
 アーロンは打たれながらまだ笑っていた。

 ひとしきり笑ったあとで、その声が止まった。

 蒼い瞳がソフィーを捉えていた。

「すまなかったな、長いこと一人にさせてしまったね」

「い、いえ」

 何かを言おうとした。だがその口に唇が落ちてくる。
 羽交い絞めにされて身動きが取れない。

 体の芯が痺れるようにうずいてくる。
 気がつけば自分も腕を回していた、力いっぱい抱き締めていた。

 ああ、と声が漏れた。あとはため息のような声になった。

 それを追ってアーロンの手が動いてくる。

 それが、次第に熱を帯びてきた。


          * * * * *
 
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