逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 病室のシュテルツは舌打ちをした。
 この事態を自邸にいるアーロンに報告する。このままではガイゼルが使者として立つだろうと。

【ガイゼル伯が出向くことに異存はない。よろしく頼む】
 いともあっさり返事が来た。

「それが後々どういう事になるか、わかっているのか」

「わかっているさ」
 口角を上げて笑う顔が目に見えるようだ。

「やっぱり新婚気分なのだな。今は国の大事が迫っているのだ、いい加減にしろあの朴念仁が!」
 臍を噛む思いだった。

         
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