逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 グリンドラ王が逝去して王座が空欄になっている。
 この状況では宰相のシュテルツが代理として行くべきだろう。しかし病床の今は無理だ。

 かと言ってオルグや宰相補佐ではあまりに不敬だ。
 会見場にはパレス新王とマリンドウ王という国家元首が顔を揃えるからだ。

「アーロンは・・、ああ、今は自邸にいるのだったな」
「はい」

「こんなときは身分的にもアーロンを派遣するのが妥当だろうが。だが彼はバッハスの侵攻で陣頭指揮に立った司令官だ。それを出席させるのは如何なものか」
「ですが、そうかといって他に国を代表する方がいるでしょうか」

「臣下に声を掛ければ名乗り出る者はいるだろうよ。マリンドウとバッハスの王と同席して協定をまとめたとなれば一挙に名を上げるからだ」
「・・・・」

「だがそれでは、その者にグリント―ルの覇者の印象を与えてしまう。まかり間違えばこの国の新王にという流れになってしまうのだ」
「つまりは、そういうことなのですね」

 オルグがシュテルツを見た。
 シュテルツが見返す。

 部屋に沈黙が流れた。


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