逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 男はラプターだった。
 包囲されたのを察して目が光る。
 
 舟が次の岸に着いた。
 何食わぬ顔で下船しようとする。

「動くなっ!」
 アーロンが脇腹にナイフをつき付けた。
 
 四方を囲まれている、さらに上陸する岸壁にも騎馬の集団がいた。

 それを見て肩を落とした。

 彼はバッハス人だった。
 母国の手先として潜入した、そのとき侵攻が起こった。

 梯子を外された格好でもがいた。
 あげく金品を盗んで国外へ逃げようとしたのだ。

「軍事機密をどこまでかすめ取ったのか」
 アーロンが冷たく嗤った。
「尋問は生ぬるいものではない、覚悟しておけよ」
 

          * * * * *
 
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