逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 リズが頭を下げた。
「本当に申し訳ございません。侍女のエレナの不祥事は私の責任です。この通りお詫び申し上げます」

 ソフィーはアーロンを見た。腕を組んで考え込んでいる。

「問題はその侍女がどこにいるかという事だ。この屋敷でエレナと親しくしていた者はいないか」
 
 ソバカスの若い女が呼ばれた。彼女はエレナと同部屋だった。

「エレナは急に外へ出て行くことがありました。そして何時間も帰って来ませんでした」
 
「どこへ行っていたのか知らないか」
「それは分からないのですが、帰ったとき市場で買ったという物をくれたことがあります、お菓子だとかハンカチだとか」

「市場だと、それはどこの市場だ」
「北通りの市場だと言っていました。そこで少しお金をもらったから買ったのだと」

「北通りの市場? そこで金をもらったと言ったのか」
「はい。・・あ、それを私にくれたことがあります。珍しいコインでこの国のものではありませんでした」

「珍しいコインですって、それを今持っているの」
 女が自室に取りに行く。

 それを見てアーロンが瞠目した。
 バッハスの刻印がされたバッハスの通貨だったのだ。

「これをエレナからもらったと言ったな」
「はい」
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