逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「ではエレナは誰からもらったのか、聞いているか」
「はい。・・あ、いえ、もらったのではなくて、人の財布から拝借したのだと言っていました」

 言葉の端から綻びが出て来る。
 女もそれを察したのだろう、一歩後ずさった。

「人の財布だと?」

「はい。その男はいつも危ない橋を渡らせるくせに満足な小遣いもくれないからって、だからくすねてやったのよと」

「まあ、そんなお金を! くすねたですって。エレナがその男から盗んだというの。それをあなたは自分の物にしているというの」

「ご、ごめんなさい。私はこれ以上なにも知らないんです、本当です」
 
 そう言って後ずさる。
 リズが止めるのも聞かず走り去った。

「まったく、使用人のしつけも出来ておりませんで重ね重ね申し訳ありません」
 
「それでも聞かれたことには最後まできっちり答えるべきだろう」
 
 リズが再び恐縮する。
 片方はがっくり肩を落とし、片方はそっぽを向いている。

「・・あの」
 間に立っていたたまれず、
「彼女はこわかったのですよ、あなたが」
「こわいだと? 俺がいったい何をしたというのだ、ここでエレナの話をしただけだろう」

「そうですけど、あなたは迫力があり過ぎるのです。途中から彼女の手が震えていましたもの」
「なんだそれは。要は事実を探って調べることだ、そうしなければ何もわからんだろうが」

「でも私は、彼女の気持ちが分かってしまって。この間だって・・」
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