逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 王宮に主だった臣下が集まっていた。
 マリンドウの会見に、誰が行くのかをめぐって議論になっていた。

 その中にガイゼルという古参の伯爵がいた。彼は、
「人選は白熱しておりますが、ここはマリンドウと縁がある者が適任では、と思うのです」

「縁がある者と申しますと?」

「例えば私などは領地がマリンドウに隣接しております。またわが家の次女はかの国の貴族に嫁いでいます。そんな意味でかの国と太い絆があると思うのです」

 その発言に周囲が黙った。
 しばらくしても反対意見が出る気配はない。
 納得した訳ではないが、反論する理由も見つからない、そんな(てい)だった。

 流れはガイゼルに決まる方向にあった。
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