逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 病室のシュテルツは舌打ちをした。
 この事態を自邸にいるアーロンに報告する。このままではガイゼルが使者として立つだろうと。

【ガイゼル伯が出向くことに異存はない。よろしく頼む】
 いともあっさり返事が来た。

「ガイゼル伯が出向くことが後々どういうことになるのか、わかっているのか」

「わかっているさ」
 口角を上げて笑う姿が目に見えるようだ。

「やっぱり新婚気分なのだな。それより今は国の大事が迫っているのだ、いい加減にしろあの朴念仁が!」
 臍を噛む思いだった。

         
< 335 / 477 >

この作品をシェア

pagetop