逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「ヴェンじゃないか、アーロン・ハインツ閣下の私兵の」

 王宮で何度も顔を合わせているデイズだった。

 彼はアーロンが率いる国軍の兵士で、ヴェンはアーロン家の私兵という立場だった。

 デイズが驚いた顔で見上げている。
 ヴェンはしゃがんで、
「一体どうしたんだ、お前がここにいるなんて」

「仕方ないじゃないか、怪我をしてしまったんだから」

「怪我だと? どこをやったんだ」
「脚だよ、だから満足に歩けないんだ」

「またヘマをしたんだろう」
「うるさいな。黒ずくめの奴に切られたんだよ、国境で」
「黒ずくめだぁ? 国境でだと」
「シッ、声が大きい」
< 34 / 466 >

この作品をシェア

pagetop