逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 王宮からグリニッシュコーチが出発した。

 贅を尽くしたそれが警護兵に守られて進んで行く。
 窓からガイゼル伯の満悦した顔が見えた。

 だがその一団はわずか数時間で引き返してきた。

「どうかされたのですか」

「どうしたもこうしたも」
 伯は蒼白になっていた。
「会見場が変更になったというのだ、突然にだ」
「はい?」

 マリンドウへ向かう道で、向こうから来た急使に出会ったのだという。
「誠に申し訳ありません、会見場が変更になりました。マリンドウ王宮ではなくセンダの町になりました」
「なにっ、センダですと」

 そこはグリント―ルとマリンドウ、バッハスの三国が接する唯一の場所だ。
 交通の要所でもあり、三か国が共同統治する町だった。

「いったい、なぜ急に変更されたのですか」

 急使は言いにくそうにしていたが、
「それが、バッハス国で逃走していた前王が弟の軍を襲撃したのです。今は両軍が睨み合っておりますが一触即発でどうなるものか」

「えっ、兄の前王が弟のパレス王の軍を襲撃したというのですか」
「はい。それによってパレス王は遠出が出来なくなったのです。パレス軍が掌握しているセンダへの道なら移動できるとのことで、マリンドウ王が現地に行くことになりました」
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