逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 マリンドウから新たな使いがやって来た。

 マリンドウ王の体調が急変したのだと。そのため王が欠席し宰相が代理として参加するのだと。

「体調の、急変・・」
 ガイゼルが先を越されたという顔になった。

「いや、そこまで状況が変わるなら話は別だ」
 たちまち及び腰になり、
「俺はセンダへは行かん! この話はここまでだ。あとは政務の方でなんとかしてくれ」

 係官が止めようとするも、逃げるように王宮を後にした。

 
 代わりにセンダへ行こうという者は皆無だった。
 誰も命が惜しいからだ。

 シュテルツが困惑した。
 なすすべがない、・・ある一点を除いては。

 依頼すればあの人物は否とは言わないだろう。
 だが現場は極めて危険なのだ。

 窓を見た。
 北からの強風が吹き付けていた。

 脳裏に、一度だけ見たソフィーという娘の顔が浮かんできた。


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