逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「もう王宮を出られた頃でしょうか」
 リズがつぶやいた。

 宮殿で支度を整えてセンダへ向かうと聞いている。
 その時間が迫っていた。

 ソフィーは窓の外を見た。
 向こうに王宮があり、アーロンはそこを出て大通りを直進しセンダに向かうはずだった。

「どうぞご無事で」
 祈らずにはいられない。

 ふいに顔を上げた。
 何かに呼ばれたような気がした。

 大門にいた門番が駆け込んでくる。
「アーロン様ご一行が立ち寄られました」

 広大な庭の向こうに隊列を組んだ一行が見えた。
 アーロンはその先頭にいた。

 フォーマルアタイアを着込んだ目を見張る姿だった。
 自邸の庭に王宮の護衛を従えて入って来る。
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