逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 アーロンは出迎えた執事や家令に、
「センダでパレス王と前王の軍が衝突したそうだ。戦場が隣町からセンダそのものへ移って来ている」
「ええっ、なんですと」

「今後どうなるかはわからない。しかし我々は行かねばならないのだ」
「ぜひにも中止してください。状況は今朝方より格段に悪くなっています、あまりに危険です」
 執事が懇願する。しかし、
「今度の会見は注目されている。だがそれだけなら無理に行く必要は無い。しかしセンダにはわが国民もいるのだ」

 三つの国が接するこの町は交通の要所でもある。三か国が共同統治する形を取っているため、グリントール国民も混在していた。

「さらに言えば、センダに続く我が領土にも戦火が及ぶ危険がある。そこの領主が国軍に救援を求めているのだ」
「なんと」

「表向きは和平会見として出席する。だが国軍を連れていない訳ではない。当初の会見へ向かう一団のあとに、気配を消して彼らが続いている。そういう訳だ」

 ことは国防にかかって来ている。
 国軍の長であるアーロンの任務でもあった。
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