逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
センダ
 センダの町が燃えていた。

 あちこちから火を噴き、人が叫びながら逃げている。彼らは煤にまみれ負傷していた。

 大通りを境にパレス新王とバッハス前王の軍が対峙している。
 怒号が飛び交い激しく剣を交えていた。

 アーロン一行がやって来たのはまさにこんな時だった。

 グリント―ル国軍はセンダの郊外、フレッグ領との境界に待機させていた。
 事態が緊迫する中ここまで同行させることは出来ない。三つ巴戦になりかねないからだ。
 またフレッグ領の先端に置くことでこの領の防衛に繋がることになる。

 会見へ参加する名目の一行は三十人、アーロンの側近と王宮の警護だった。

 状勢を掴もうと物陰から偵察する。

「・・これは互角と言った所か」
 両軍は拮抗しているように見えた。
「弟のパレス王が国内を掌握したのではなかったのか」

「それがバッハス前王の勢いが盛り返してきて、それを見て寝返る兵が相次いだそうです」
「ほう、まさに泥沼だな」
 痛まし気に双方を見た。

「それで、グリントール人が集まっているのはどの辺りだ」
「マリンドウの国境検問所の周辺だと聞いています。そこに避難すれば戦禍をかわせるのではないかと」

「人数は?」
「約五十人、このセンダで商売をしている男とその家族です」
「では彼らを退避させて我々も早々にセンダを後にする、この地に長居は無用だ」
「はっ」
< 362 / 466 >

この作品をシェア

pagetop