逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
 裏庭ではヴェンが馬車の横について待っていた。

「では中の人物をおろしてくれ」
 アーロンの言葉に、まず兵が降り立つ。
 次に若い男がもう一人の兵に拘束されるように下りてきた。

 裏庭には月明りがない。
 誰だろうとソフィーが見つめる。

 その彼女の前に、次の人物が下りた。
 中年の女だった。

 その影だけで、
「ネイラ? もしかして、ネイラなの?」
 女が顔を上げた。
「まさか、ソフィー様、ソフィーお嬢様ですか」
「そうよ、私よネイラ」

 言うなり駆け寄った、そして彼女に抱き着いた。
「まあまあ、ソフィー様」
「ネイラったら、いったいどうしていたの。突然いなくなって、ずいぶん探したのよ」

「ソフィー様も、よくご無事で」
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