逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
前途に向けて
 シュテルツの病状は一進一退を繰り返していた。

 ベッドの上に起きて書類を見ているときもある。
 しかし次の日には高熱で意識が朦朧としたりする。

 医者は首を振って、
「前に受けた刀傷が原因です。体に入った細菌が作用しているのでしょう。手を尽くしているのですが今の医学ではどうも」

 じっと瞑目して何かを考えているようなときがあった。
 その直後目を見開いてこぶしを握っていた。

 そして、
「・・アーロンを、アーロン殿を呼んでくれないか」
 オルグに告げた。


         *  * * * *
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