逆境に咲いた花は、可憐に匂いたつ
「え?」
「悩んでいるんだろう、王宮へ行くことを」
「アーロン様」
「それぐらいわかるさ。だから少しでも慰めになったらと思ってね」

 胸がジンと熱くなる。
 アーロンの側に走り寄った、その胸に飛び込んだ。

「もし場所が代わったら」
 ア―ロンがささやいた。
「万が一王宮に行くことになったら、この花畑は毎日は見られない。だが住居が変わったら向こうにも作るつもりだ、庭いっぱい埋め尽くす花畑をね。フィアーラが咲き誇るあのラクレス家のようにだ」

 ソフィーは目を見開いた。
 信じられない顔をしている。
 見る見る涙が浮かんできた。

「そのときはお手伝いします、父と母のように。万が一王宮に行くことになったら、二人で作りましょうフィアーラの花畑を」

 ア―ロンを見上げるために体を離していた。
 そんな彼女を引き寄せる。

 夕陽はいま沈もうとしていた。

 その最後の輝きが、抱き合う二人を包んでいた。
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